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	<title>Night&#039;s Novel</title>
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		<title>時崎狂三</title>

		<description>あら、あら。初めまして。わたくし、時崎…</description>
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			<![CDATA[ あら、あら。初めまして。わたくし、時崎狂三(ときさきくるみ)と申しますわ。ここにいらしたと言う事は、わたくしに興味を持ってくださったんですのね。うふふ、嬉しいですわ。説明は出来る限り簡潔にしますので、どうか最後までご覧になって下さいまし。


フォロー、フォローバックについてですが、版権、創作、一般の全てに対応しておりますわ。Ｒ垢の方でも、会話のみならば歓迎いたしますわよ。フォローもブロックも好きにして下さって構いません。基本的には、わたくしから縁を切ると言う事はないでしょう。無言フォローも気にはしませんが、どのようにコンタクトを取れば良いか分からず戸惑ってしまいますわ。わたくしを時線で眺めたいだけの人と判断して、フォローバックはいたしませんのでご了承下さいまし。


わたくしには他作の知識がほとんどありませんの。募集タグについても、気になった方でしたら知らない作品でも反応してしまいますわ。そちらの作品は基本的に知らないものと思って下さいまし。お互いの世界の事についても話の種になるだろうと思いますの。とはいえ気楽にやっておりますわ。ゆるりと会話を楽しめれば良いですわねぇ。


また、わたくしについても知識は多くはありませんわ。まだ、アニメを観たばかりですの。ここにいるわたくしは"アニメ知識を得たタイミングの時崎狂三"を切り取った分身体ですわ。


行為については恋人以外非対応、スキンシップも基本的に許可制ですわ。無理やり触られるのは誰でも嫌ですものねぇ……きひッ、ひひひ……ああ、ああ、そういうのは怖いですわ、恐ろしいですわ。ですので、お気をつけて下さいまし。


恋人や家族についてですが、わたくしには既に大切な方がおりますの。ですので、そうした仲は期待しないで下さいまし。家族については、今のところ作るつもりはありませんわ。家族とは恋人よりも特別な関係ですもの。気軽に作るものではないとわたくしは考えますわ。


※ 注意事項 ※
わたくしは時崎狂三という姿の性質上、誘っているような言動を取る事がありますわ。しかし前述の通りわたくしには大切な方がおりますの。どのように見えたとしても、恋人以外はただ１つの例外もなく誘ってはいませんので、誤解なさらないで下さいまし。そうした事もあって、基本的にお部屋へ人を招くつもりはありませんわ。


これくらいで十分でしょうか。合言葉などは用意していませんわ。最後まで読んでくれた事に深く感謝致しますわね。


それでは、多くの方との出逢いを楽しみにしておりますわ。 ]]>
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		<dc:date>2016-01-04T01:49:34+09:00</dc:date>
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		<title>予言者の孤独</title>

		<description>　日曜日の午後一時、僕はそのカフェを訪…</description>
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			<![CDATA[ 　日曜日の午後一時、僕はそのカフェを訪れます。
　
　それは、君とのデートの待ち合わせに使ったカフェでした。初めてのデートも、最後のデートも、いつも待ち合わせは決まってこのカフェ、そしてこの席でしたね。出会う前から二人ともこの席がお気に入りで、席が埋まっていると気分が落ち込んだものでした。僕たちのデートは傍から見れば奇妙なものに映ったかもしれません。カフェで語り合う。ただそれだけのものでしたから。
　実際、退屈でなかったかと聞かれると僕は正直に退屈な時もあったと答えなくてはなりません。君はどうもお話が苦手で、そして僕もお話は苦手で。午後一時に待ち合わせて午後六時にお店を出るまで（これもまた、決まりきった僕たちのデートプランでした）会話と呼べる会話は数回しかなかった日もありましたね。この際、打ち明けてしまいましょう。君と話すのは、とても退屈でした。ちびちびとコーヒーを飲みながら、相槌を打っては終了する会話。そんな、どうしようもなく退屈な時間。しかし、退屈で退屈で仕方がなくても、僕も君も、日曜日の午後一時にここに来なかった事は一度たりともありませんでした。きっと、僕たちは退屈を愛していたんだと思います。互いに視線が合ったと思えば、すぐに逸らしてしまったり。会話の糸口を探してテーブルをとんとんと指で叩いてみたり。そんな君の仕草はとても愛おしくて、退屈と断言できる時間も、決してつまらない時間ではありませんでした。
　
「私には、未来が見えるの」

　ある日、君が唐突にこぼした言葉です。僕は当然、信じませんでした。しかし君の目はいつになく真剣で、いつもなら目が合えば逸らしてしまうというのに、じっと見つめてきましたね。君がこっそり打ち明けてくれた秘密は、僕の理解を超え、どうやら本当の事のようでした。
　人の死、社会情勢、宝くじの当たり番号、君は何でも言い当ててしまいましたね。明日の事、明後日の事、一月後半年後一年後。そんな枠に収まらず、見ようと思えばその人の全てが見えるのだと、君は言っていました。そんな事ができるのならもっと自分のために利用してしまえばいいと僕が言っても、君は首を横に振るばかり。君には未来が見えた。だから、全ての物事に終わりがある事を知っていて、酷く臆病になっていたのです。なにせ、自分の命が消えてしまう日まで、見えてしまっていたのですから。
　君は僕に言いました。この恋はもうすぐ終わってしまう、だから、ありがとう、と。いつ、どこで、どのようにして終わるのか。君は教えてはくれませんでした。果たして君が言ったように恋は終わってしまいました。でも、それは君の中での恋。僕の中での君への想いは消えないばかりか、喪ってからますます膨れ上がっていきます。君はもう、この世にはいない。恋の終わる日とは、君の命の終わる日でした。
　
　ねえ、君。君は馬鹿です。どうして教えてくれなかったのですか。教えてくれたなら、僕はどんな手段を使ってでも君を助けようとした。いえ、分かっています。君には未来が見える。僕が助けようとする事も、失敗する事も、例え成功したとして次はいつ死ぬのかまで、全てが見えていたのでしょう。だから言わなかった。僕には、何もできないから。それでも教えてほしかったと願うのは、僕のわがままなのでしょうか。
　未来が見える君。君には、君を喪った後の僕についても見えていたのですか？　こうして、君を喪った後にも君とのデートに使ったカフェに足繁く通い詰めてしまう事も、知っていたのですか？
　近々、このカフェは無くなってしまうようです。そうすれば僕は、君との想い出をまた一つ失う事になる。死んでしまうと分かっていたのなら、もっとたくさんの想い出を作っておきたかった。僕を支えてくれるものをたくさん作っておきたかった。
　
　最近、君の顔をうまく思い出す事ができなくなってきています。記憶の中にあった君の笑顔を探そうとしても、もやがかかっていてたどり着けないんです。僕の中から君が消えていく。君の事が好きなのに、思い出せなくなっている。君は写真に撮られる事を嫌がっていましたから、君という存在は僕の記憶の中にしかないのです。君が好き。けれど忘れていってしまう。ねえ、君。これが君が言っていた、恋の終わりなのでしょうか。
　
　君がいなくなってから三年が経った今も、日曜日の午後一時、僕はそのカフェを訪れます。 ]]>
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		<dc:date>2015-10-19T21:27:27+09:00</dc:date>
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		<title>本能</title>

		<description>　ある日曜日、目覚めた少女はその身に異…</description>
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			<![CDATA[ 　ある日曜日、目覚めた少女はその身に異変を感じた。体が痺れている。ぴりぴり、ぴりぴりと。ベッドから身を下ろし床を指先でしっかり踏んでみる。しかし感触が無い。床を感じられない。まるでふわふわと浮遊しているかのような錯覚が少女を襲う。
　階下からは怒鳴り声が聞こえた。それは両親の声。いつもなら、聞いているだけで吐き気を催しそうな耳障りな声。だが、今朝の彼女は不思議と苛立ちを覚える事はなかった。
　それよりも体の異変が気になる。脳が洗われているようなくすぐったさの中に幸福を感じるのだ。気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい。しかし少女には何が気持ちいいのか分からなかった。分からないけれど、ひたすらに気持ちがいい。足取りが軽い。生まれ変わったかのようだ。幸せで幸せで幸せで、その原因は分からなかったがどうでも良かった。幸せなのだから、それでいい。
　左手が奇妙に熱かった。ふと、視線をやる。カッターナイフを、力いっぱいに、握りしめていた。ああ、熱かったのは私の血か、と少女は他人事のように納得する。見渡せばベッドもだいぶ赤くなっているようだ。少女はカッターナイフを手放した。痛みはなかった、ただ気持ちが良かった。

　ご飯を食べようとしたら、皿の割れる音がした。母親の悲鳴が耳に届く。いつもの事だ。けれど今日はいつもと少しだけ違う。まるで自分が超人にでもなったみたいに、何でもできる気がした。全ての存在が小さく見えた。
　ふと視線を両親の方へやると、非現実的な光景が広がっていた。鼻が折れているのか、母親の顔面は血に染まっていた。その手には包丁が握られていて、父親の腹部に刺さっていた。
　ああ、殺した。
　少女は泣きながらごめんなさいと連呼する母親を見ながら、ただ一言そう思った。叫んでいた父親は動かない。母親は父親の体を揺すり、何度も何度もごめんなさいと謝っている。その姿に、少女は特に思う事はなかった。
　今日は気持ちがいい。足取りも軽いし、まるで浮いているようだ。時々目の前が白くなるが、些細な事。今日、全てが終わるのだと確信した。



　少女は家を出た。制服姿に身を包んではいるが向かう先は学校ではない。駅だ。今なら死ねると少女は確信していた。
　ずっと、死にたかった。自分が嫌いだった。でも死ねなかった。死ぬのが怖かった。
　けど今日は違う。思考が頭から抜け、鎖から解き放たれたような多幸感に満ち満ちていた。自分の体が自分のものでないようだった。動かそうとしないでも勝手に動いてくれる。そんな痺れるような感覚はとても気持ちが良かった。

　車のクラクションが鳴り響いた。

　一瞬にして、少女の世界には色が戻ってきてしまった。駅へ向かう途中の信号を、どうやら赤で渡っていたらしい。急に、現実が襲ってきた。
　信号を急いで渡りきった少女は、左手がじんじんと熱くなってくるのを感じた。見ると、皮が裂け肉が見えている。忘れていた痛みを体が思い出してしまった。その場に少女はうずくまる。痛くて痛くて、涙が出た。
「お母さん……」
　そんな言葉が口をついて出た。母親に助けてもらいたかった。しかしすぐにそれは不可能だと少女は思い出す。
「お母さんがお父さんを殺した」
　ぽつりと呟いてしまった。まぶたに焼き付いたひどく非現実的に思えていた光景が、現実味を帯びてしまった。家にはもう、帰れない。帰ってしまったらそこには、血まみれの父親と、もしかしたら自殺した母親がいるかもしれないと思った。
「こんなはずじゃなかったのに」
　こんな人生は望んではいなかった。もう終わりだ。少女はそう思った。
　大粒の涙をこぼしながら少女は立ち上がり、目の前の車道を見つめた。
「死ねる、死ぬんだ、もう嫌、疲れた、死にたい、死にたい、死にたい、死にたい」
　呪詛のように繰り返しながら車を待った。駅まではまだ遠い。ここで車に轢かれて死のうと思った。
　そして、車が来た。大きなトラックだった。近付いてくる。あとは少しだけ前に進めばいい、そうしたら楽になれる。
　しかし身がすくんだ。そのトラックは家よりも大きく見えた。踏み出す事はできなかった。死ぬ事が、怖くなってしまった。
　また次の車が来た。軽自動車だった。次こそ、死のう。そう思って踏み出す準備をするも、やはり踏み出す事はできなかった。怖くなってしまった。
　三台目の車が来た。少女は思う。今度こそ、今度こそ死のう——。

　三十分が経過し、少女はまだ生きていた。そして結論を出す。死ねるわけがない。嗚咽混じりに少女は泣いた。
　すると。
「ねえ、さっきから何してるの？」
　背後から声が聞こえた。
　涙でぐしゃぐしゃになった顔で振り返ると、制服姿の知らない女の子がそこにはいた。今日は日曜日だというのに不思議な子だと少女は思ったが、自分も制服姿だと気付くと乾いた笑いが込み上げてきた。
「手、痛そうね」
　カッターナイフの食い込んだ左手を見ている女の子の言葉に対抗するように、少女は涙を拭いながら女の子の手首を指差して言った。
「貴方も、痛そう」
　無数に刻まれているのは、リストカットの痕だった。



「なんで、死のうと思ったの？」
　気付けば公園のベンチに肩を並べて座っていた。響子と名乗った女の子が問いかけてくる。少女には明確な答えなどなかった。しかし沈黙は怖い。
「死にたかったから」
　仕方なくそんな言葉を口にしてみた。すると響子は笑った。
「そっか、私と同じか」
　響子は続ける。
「でもさ、嘘だよね」
　少女は心臓がズキリと痛むのを感じた。心を全て見透かされてるような気がした。
「……何で、そう思うの」
「泣いてたから」
　響子は少し悲しそうに笑う。
「実はさ、私も同じ事してたんだ。車に轢かれようとして、でも急に怖くなっちゃってできなくて。それで、なんか全部バカみたいに思えてボーっとしてたら、貴方が同じ事し始めた」
「見てたの？」
「見てたの」
　恥ずかしさと情けなさが少女を襲った。
「なんで、死ねないんだろう」
「死にたいと思っても死ねる生き物じゃないんじゃないかなーって思った。もっと強い本能があるんだよ」
「…………生きたい」
「そ。それそれ」
　響子は彼女の手首に刻まれた痛々しい自傷行為の痕を空へ伸ばすと言った。
「残念ながら、死にたいという思いは生きたいという本能に勝てないってわけ。だから、生きるしかないんだよね」
　ぽつ、と額に雨粒が落ちてくるのを感じた。いつの間にか空が曇っている。
「降るね」
　響子はそう言ったが立ち上がる様子はなかった。それは少女も同じで、ぽつぽつと雨がその身を濡らしていっても動こうとはしなかった。

　雨の勢いは増し、やがて豪雨と呼んでも差し支えのないものになった。目を閉じるとシャワーを浴びている気分で、どこか心地がいい。少女は唐突に切り出した。
「お母さんが、お父さんを殺したの」
　響子は答えない。少女とて、気の利いた返事を求めているわけではなかった。ただ気付けば口にしていた。
「包丁で、刺して。お父さんはよく殴る人だったから、耐えかねたんだと思う……限界で、それで、殺しちゃった」
　激しい雨音にかき消されそうなほどに小さな声で淡々と紡いでいく。
「私も、死ななきゃって思って。ちょっとオカルトちっくだけど、魂が肉体から離れてるような感覚がして、死ねると思ったの。……響子さんが見た通り、死ねなかったけど」
　隣に座っている響子へ視線を向けると、そこに響子の姿はなかった。少女は戸惑う。まるで雨に溶けてしまったように姿が見えない。辺りを見回してもそれらしい姿はなくて、言いようのない不安感に襲われた。
　しかし、少女は背後からぎゅっと抱きしめられた。
「——生きててくれてありがとう」
　響子の言葉は震えていた。
　ずぶ濡れの髪を撫でられた少女は胸が高鳴るのを抑えられなかった。誰かに抱きしめられたのは初めてだった。自分の存在を、自分が生きていてもいいんだと言われた気がした。



　響子は別れ際に、悲しい微笑みを少女に向けながら言った。
「ごめんね、私達は多分もう会えない。私はこれから、警察に行かなくちゃいけないから。それと——もし生きてたら、親の事は大切にしてあげて」
　それだけ言うと、響子は踵を返し雨の中へ消えていった。引き止めたかったが、少女はその言葉を持ち合わせていなかった。

　携帯が鳴った。母親からの着信だった。
「——お母さん？」
「…………お父さん、生きてるわ。今、病院。貴方も来て」
　病院の名前だけを告げると、電話は切れてしまった。
　少女はため息を吐いた。それが意味するものが安堵なのか不安なのか、少女には分からなかった。

　ずぶ濡れのまま歩いていると、信号に差し掛かった。車が走っている。赤信号だ。
　少女は信号が変わるのをおとなしく待った。 ]]>
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		<dc:date>2015-09-30T01:24:18+09:00</dc:date>
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		<title>霧の国物語「魔女」</title>

		<description>　昔々あるところに、とても優しい女の子…</description>
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			<![CDATA[ 　昔々あるところに、とても優しい女の子がいました。女の子の名前はクラリス。彼女は、森に生きる民、森の人でした。
　森の人の暮らしは、それはそれは質素なものでしたが、穏やかで、豊かで、生命への愛に満ちておりました。生命とは、なにも動物に限った話ではありません。森の人は木々と会話をするのが得意でしたし、踏みしめる土、降り注ぐ雨、頬を撫でる風なども、森の人にとっては慈しむべき生命なのです。
　自然と一体になり、小さな精霊——例えば土の精霊や水の精霊、風の精霊と言ったものです——と友達になる事ができる森の人は、外の世界の人達からは魔法とでも呼ばれるものを使う事ができました。森の人にとっては、不思議な事ではありません。小さな小さな、手のひらに乗るほどに小さな精霊の力を、ほんの少し貸してもらうだけなのです。
　
　たくさんの人々とたくさんの自然とたくさんの精霊に愛されて育ったクラリスは、掛け値なしの美少女となりました。美しい森の人の中でも一際美しい彼女は、何よりも血の流れる事を嫌いました。森の人は野菜や果物を食べ、肉を食べるという事はしません。だから森の外に、友達の鹿さんを食べてしまう人がいると聞いた時はショックでしたし、戦争などというものがある事を知った時には悲しみと恐怖に心が沈んでしまいました。
「ねぇ、クラリス。森の外に出てはいけないよ。私達はこの森の中で生きて、そしていつかは自然に帰るんだ。森の外には、クラリスを傷つけるものがたくさんあるからね。森の人は、森の中にいるから森の人なんだ。森から出たら、森の人とは呼べないだろう？」
　それは何度も何度も言い聞かされたお母様の言葉です。クラリスはその言いつけを頑なに守り、冒険好きの友達にそそのかされても決して森の外に出る事はありませんでした。

　しかし——クラリスが森の外に出る事はなくても、森の外の人は彼女たちをそっとしておいてはくれませんでした。

　しんと静まり返った夜の事でした。皆が夢の世界に沈む中、クラリスは密かに夜更かしをしておりました。手のひらに集まった風の精霊が、ぼんやりと薄闇を照らします。
「星の精霊さんも、いるのかな。あの空の向こうには何があるんだろう……」
　木々の隙間から覗く満天の星空に手を伸ばし、クラリスは呟きます。精霊はチカチカと発光しながら、蛍のように飛び回りました。精霊は言葉を話す事はありません。森の人にできるのは、心を同調させる事。言葉がなくても、心が寄り添えば友達にはなれるのです。
「ふふっ、知らないよね。そう、知ってるはずがない……だって、森の外には誰も出ないから……お空の事も、誰も知らない」
　そう漏らすと僅かな寂寥感がクラリスを襲いましたが、しかし外の世界への好奇心は森の中の安定した暮らしの前では簡単に収まりました。傷つく世界に出て行く必要はないとのお母様の言葉が、彼女の憧れを断ち切ります。
　クラリスは地面に寝そべると、目を閉じて風の精霊へと心を重ねました。優しい風が彼女の体を包み、ふわりと浮かびます。そのまま腕を広げれば、無重力の心地良さが心に染み込みます。彼女はこうして夜を過ごす事が好きでした。薄く瞼を開けば、綺麗な満月が夜空を照らしています。思わず微笑みがこぼれました。
　けれど不意に身を包んでいた風が消え——クラリスは地面に背中を打ちました。
「痛っ……ちょっと、痛いよ……もう、どうしたの？」
　風の精霊と友達になったばかりの頃は、うまく心を通わせる事ができずにこうして落っこちたものでした。昔を思い出して苦笑していると、違和感がクラリスを襲います。風の精霊の心がどこにもありません。心だけではなく、夜を照らしていた精霊の姿そのものが忽然と消えていました。
　精霊がいなくなるのは珍しい事ではなく、すぐにへそを曲げる精霊もいます。しかしクラリスは何だか嫌な予感がしました。果たして、その予感は的中してしまいます。森の奥深くから、不気味な音が響いてきました。
　ガシャン、ガシャン、という聞きなれない音。たくさんの人が行進しているようにも聞こえます。でも、一体誰が。クラリスの心に、初めて戦争というものを知った時以来の、恐怖が押し寄せてきました。
　赤い赤い、まるで血のような光が森を照らしています。クラリスは咄嗟に身を隠し、ついに姿を見せた人達を息を殺して眺めました。それは、お母様が教えてくれた、森の外の人でした。鈍色の甲冑に身を包み、木々を燃やした松明を手にしています。その腰にはありとあらゆる命を奪うともいう、剣。人を殺めるための武器を初めて目にしたクラリスは、不安と恐怖に心が塗り潰されていくのを感じました。
　鈍色の甲冑の一団が動きを止めると、その先頭に一人の女性がいる事にクラリスは気付きます。夜に溶け込む闇色の鎧を身に付けた、銀髪の女性。赤々と燃える松明に照らされる薄紫色の瞳はとても鋭く、思わず身がすくみました。ギロリと辺りを見渡すその目に、捕まったような気がしたからです。確かに目が合ったように思ったのですが、しかし銀髪の女性はクラリスには気付いていない様子でした。
　クラリスが安堵に思わずため息をついたと同時に——銀髪の女性が、松明を放り投げました。その光景は、クラリスには非常にゆっくりと感じられました。ごうごうと燃える松明。命をじわじわと削られている木の悲鳴が聞こえてくるようでした。その炎が投げられた先は、静かに寝息を立てている皆のところでした。

　その夜の事を、クラリスが忘れた事はありません。暮らしてきた世界、森は焼かれました。お母様もお父様もお友達も全部、目の前で焼かれていきました。眠りから覚めた皆を襲ったのは激しい痛みと絶望。その全てが、クラリスの心に流れ込んできました。森の外からやってきた悪魔は、何も言わずに人を殺し、木々を殺し、そしてその光景を眺めていたクラリスの心を殺しました。優しい女の子はその日、死にました。
　焼けた遺体を見つめる少女の目に、光は灯っていません。そこにあるのはただ、激しい怒り。炎のように燃え上がる怒りでした。その怒りに、炎の精霊が付け込みます。炎の精霊は、風の精霊のように穏やかな性格をしてはいませんでした。憤怒に染まるクラリスの心を軽く一押しし、彼女は——復讐に取り憑かれてしまいました。



　森の外からやってきた悪魔に全てを奪われたクラリスは、もう森の人と呼ばれる事はありませんでした。彼女は森の魔女。炎を操り人々を焼き焦がす、森の外の全ての人に恐れられる存在となってしまったのです。
　彼女は今日も、まるで亡霊のようにさまよい続けています。全てを奪った、銀髪の女騎士への復讐を果たすためだけに。 ]]>
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